腰の病気でも一番有名な椎間板ヘルニア。
椎間板の役割は大きく分けると2つあります。
①背骨にかかる重さを和らげるクッションの役割
②背骨が自由に動く際の支点の役割
椎間板は軟骨の一種ですが、2重構造になっています。
中心にある髄核(ずいかく)を丈夫な線維輪(せんいりん)が何重にも取り囲んでいます。椎間板ヘルニアとは髄核が線維輪を突き破って飛び出す疾患です。
目次
〈椎間板ヘルニアが起こす症状〉
〈腰痛〉
飛び出した髄核がまわりの靭帯を傷つけるなどして激痛を起こしたり、圧迫刺激により炎症が起こった場合に鈍痛を感じたりします。
更に筋緊張を引き起こし、2次的に筋肉痛を起こすことがあります。
〈おしり~足の神経症状〉
ヘルニアが神経を圧迫した際に、神経障害を引き起こします。
① 知覚の障害(しびれ・痛み)
神経が強く圧迫を受けると、神経の先に向かって痺れや鈍痛を感じるようになります。おしりの上半分あたりも痛みがでやすい場所です。
②筋肉の障害(脱力・麻痺)
筋肉に指令をだす神経が障害されると、筋肉の伸び縮みがうまくいかず萎縮が起こります。さらに症状が進むと思うように力がはいらなくなります。
③膀胱・直腸障害
脊髄が強く圧迫をうけると、便秘やおしっこが出にくい症状がでます。この場合は手術が適応になります。
〈側弯〉
疼痛性側弯といって、ヘルニアの圧迫を避ける姿勢をとる結果、側弯症のように見えます。まっすぐ立とうとしても痛みの出る反対側に体が傾いてしまいます。
〈椎間板ヘルニアの発症パターン〉
①健康丈夫な椎間板に大きな外力が加わり、一気に髄核が脱出するパターン
10~20代で起こります。激しい運動などにより、椎間板内の髄核が飛び出します。脱出の勢いが強く、神経の圧迫だけでなく、まわりの靭帯などを傷つけるなどした場合、動けないほどの激痛が起こります。
②劣化した椎間板にさほど大きくない外力が加わって、髄核が脱出するパターン
20歳を過ぎると椎間板には栄養の供給がなくなります。新しい細胞の入れ替えがおこなわれず、椎間板の繊維に少しづつ劣化が起こります。
劣化した繊維は髄核を保持する力が弱く、外力が加わると亀裂が入ります。繊維に入った亀裂が一番外側に達した時に髄核が漏れ出します。
以上がヘルニアによって起こるかもしれない事ですが、画像でたまたまヘルニアが確認されたけど、上記の症状がまるでない人も沢山います。
「ヘルニアで痛くないことがあるの?」
画像でヘルニアが確認されても痛みがないケースはいくらでもあります。
神経は柔らかい組織なので、神経周囲の隙間が広く逃げるスペースがあればヘルニアで押されても痛みを引き起こさずに済みます。
〈椎間板ヘルニアとは症状ではなく、見た目の問題〉
そもそも、ヘルニアとは組織がはみ出した状態のことを指します。
脳ヘルニア、鼠径ヘルニア(脱腸)がそうです。
はみ出しているかどうかが基準なので、痛くなくても画像で椎間板が飛び出していれば椎間板ヘルニアの病名が付きます。
逆に、椎間板由来の激痛があっても、MRI画像を見て椎間板の脱出が確認できなければ椎間板ヘルニアという診断はつきません。
椎間板ヘルニアとは症状よりも見た目で病名が付く疾患なのです。
腰痛で当院を訪れる患者様には『レントゲンやMRIでもヘルニアはないと言われた。』という方も沢山います。
腰痛の中には手術の適応になるものがあるので画像診断は大切です。
レントゲンは骨を見る機械なのでヘルニアがあるかはわかりませんが、骨の病気かどうかを鑑別したり、骨どおしの隙間を見て椎間板の厚さが保たれているかどうかを知る事ができます。
MRIは軟部組織が見えるのでヘルニアか判別できるだけでなく、脊髄に腫瘍等があれば見つける事が出来ます。
画像診断で手術適応の疾患がなければ、ひとまず重大な後遺障害や生命にかかわる病気や、大きなヘルニアは除外されます。
では、ヘルニアの神経圧迫さえなければ椎間板は大丈夫か?といえばそうとも言い切れません。ヘルニアになる手前の段階でも痛みがでるからです。
これについては下の記事にまとめました。
〈当院では〉
〈診察〉
椎間板はもちろんですが、それ以外も 原因となりうる部分 (筋肉、骨、関節、靭帯など)を診ていき、明らかに違うものを除外していきます。
最終的に椎間板ヘルニアが疑われた場合は、発症してからの期間、過去の発症、手術適応の症状などを見ていきます。
さらに椎間板は合計23個あり、そのどれが神経を押してるかによって症状が違うので、神経テストで細かく障害されている部分を特定していきます。
画像診断やさらに細かい検査が必要な場合は、対診してくださる森整形外科、西大宮病院をご紹介してます。
〈治療〉
上でも述べたとおり、ヘルニアにはいくつかの発症パターンがあるのでそれによって治療内容は変わります。仮に分類すると
①年齢
- 10~20代ではっきりした大きなキッカケで急に発症したタイプ
- 20~60代で椎間板が劣化し、痛みを繰り返しやすいタイプ
- 50代以降に多い、ヘルニアの圧迫は強くないが、長期化して他の疾患を伏せ持つタイプ
②細かい症状
- 神経痛の強さ、場所
- 腰痛の強さ、種類
- 痛みを感じる動作、姿勢
③2次的障害の有無
- 疼痛性側弯
- 筋膜性の痛み
- その他
以上から、徒手療法に加え温熱・電気治療機器・超音波・牽引療法などから選択して治療を進めていきます。
腰痛は症状を丁寧に診る事が大切です。お困りの方はお気軽にご相談ください。
セカンドオピニオンも承ります。
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ガストさんとなりです。